広くいわれることですが、戦後の日本住宅はスクラップアンドビルド(古くなったら壊して新しいものを造る)を繰り返してきました。その結果、私たちの意識には"新しい物件がよくて、古いものはよくない"という価値観が植え付けられてしまったように思われます。特に賃貸物件については次のような会話が聞かれること多く、その傾向の強さがうかがえます。
オーナーさん
「うちの物件、まだ入居者が決まらないの?」
不動産会社
「築30年といえばかなり古いですからね。。。正直、厳しいところです」
オーナーさん
「せっかくリフォームもしたのに、どうしたら入ってもらえるかしら?」
不動産会社
「賃料を思い切って下げるか、そろそろ建替え時かもしれませんよ」
この会話の後、引続き解決策のご相談ができればよいのですが、ここでオーナーさんが不動産会社との関係を解消されてしまうことがあります。その多くは、より大手の方が入居者を集める力があるとお考えになり、委託先を変更するケース。しかし、これには大きな誤解があります。なぜなら、ここ数年は大手も多くの空室を抱えており、状況は同じだからです。つまり、問題は不動産会社の大小ではないということ。今、注視すべきなのは、時代の変化と共に業界全体が迎えている『需要と供給のバランス』の逆転です。
かつて、空室が出てもすぐ次の入居者が決まる時代がありました。それは単純にいえば、賃貸ユーザーの数(需要)が、物件(供給)よりも多かったから。大家さんに謝礼を払う「礼金」はまさに当時の象徴です。しかし、今、「フリーレント」や「礼敷無し」というこれまでになかった契約スタイルが生まれ、それでも借り手がつかないのは、物件数がユーザーを上回り、需給バランスの逆転が起こっているからだと考えられます。
同様の例として、10年ほど前にブームが起こったデザイナーズマンションもあげられます。全盛期は、建てればすぐに部屋が埋まっただけでなく、賃料も周辺相場よりも高く設定できました。それが今となっては、あれほど人気だったものが相当な苦戦を強いられています。これもブームで物件が増え、その数がユーザーよりも多くなったという逆転現象の結果です。