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03月26日
011 小石川|文京区
築50年以上とは、戸建てでは決して珍しい古さではありません。
しかしこの物件が他の築50年と違った雰囲気を放っていたのは
建った時からほとんど手を加えられずにいたためでした。
牛乳販売店だったこの家の広い土間にはには、大きな業務用の冷蔵庫が残っていました。
二階には住み込みで働く配達員のための三段ベッドがあり、ロッカーがありました。
多趣味な施主の部屋には、レコードやテープレコーダーのコレクションや、
ギターや、画集や、サーフボードや、ボーリングの球や、釣り道具が潜んでいました。
全てにに埃が厚く降り積もって、長い時間が経過したことを示していました。
手を加えていない、ということは、当時の面影がそのまま残されていると同時に
それだけ老朽化しているということでもあります。
トタンの屋根は錆で穴があき、雨が漏れてその重みで天井が落ちていました。
碍子で引かれた電線は古く、漏電する危険性があります。
在来の浴室のタイルは割れ、床下に溢れた水によって土台の木は腐って無くなり
一部支えを失った建物は大きく傾いてしまいました。
今回の使命は、この瀕死の建物をもう一度住居として甦らせることです。
けれども、全てに手を入れ始めるとどこまでもキリがありません。
そこで今回は修復に徹することにしました。
それはまるで古く壊れやすい遺跡の土を丁寧に払い、
欠片を合わせ、朽ちた色を塗り直すような作業です。
非常に地味な作業ですが、これによって果たしてこの建物はどこまで甦るのか。
それを確かめたいと思います。
(文:ルーヴィス・今村真理) ![]() ![]() |

