株式会社I.R.A./国際ローヤル建築設計 一級建築士事務所
iraap/jp
以下、建築家のテキストです。
「強羅テラス」
2020年に開催される東京オリンピックは、日本において経済的効果をもたらす一方で、今後施設や店舗、宿泊所等の過剰な建設が空き家になっていくという問題点も否めない。本計画はそう言った点を踏まえ社会的状況により売買可能な住宅ともなりうる一棟貸し旅館へのコンバージョン計画である。
敷地は、箱根町強羅。大文字焼きで知られる明神ヶ岳や浅間山が窓から覗かせるバブル期に造られた温泉付き住宅である。当然考えられる和風に寄せていく表面的なインテリアデザイン手法に頼らず、低予算でインバウンド向けにも配慮される建築的空間をどうつくるか。我々は屋外に着目した。既存の建物には、日本庭園を模したような小規模な人工庭が備えられていたが、目の前には明神ヶ岳や浅間山の広大な借景が眼に映る環境であった為、庭を排除し、ここでしか感じられない山々の四季を望めるテラスをつくる。テラスには低い軒先の屋根がかけられ、風景をさらに演出する風情のある軒下空間が生まれた。
敷地は接道条件が悪い。車両での搬入出が不可能な為、解体から全て手作業で行う必要があった。そこでテラスの屋根に使用する構造材には人力で行える少しでも軽量な小径木材を採用し、スタディを重ねた。箱根には江戸時代後半から作られ始めた寄木細工という伝統的な組み木がある。この手法で屋根を構築できないかと考えた。4本の90角柱とその間に60角の繋ぎ材で作る合成柱、その柱に組み込まれるように3本の60×210梁材を流し、60角の垂木を井桁、斜め格子状に積層させた組み木構造とした。座金を隠蔽する座掘も菱形にするなど、箱根の歴史を継承する伝統工法的な屋根組みができた。
強羅を象徴する組み木屋根の下で春夏秋冬を感じることができる、小規模な計画ではあるが、建築・構造・環境・地形・歴史・文化・経済的なありとあらゆる意味で超合理的な建築が出来上がった。
| 種別 |
旅館/コンバージョン |
|---|---|
| 構造規模 |
木造一部コンクリート造 地下1階地上2階 |
| 設計 |
|
| 施工 |
ルーヴィス |
| 施工管理 |
石田小絢 |
| 計画面積 |
105.85m2 |
| 撮影 |
高橋菜生 |
| 所在地 |
神奈川県足柄下郡箱根町 |
| 構造設計 |
mono/森永信行 |
| 設備設計 |
アカツキ天心舎/西沢健治郎 |
| 企画 |
ハウスバード株式会社 |
| アート |
須田ユカリ |
| 家具 |
キャラノミクス
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