5人のお手伝いさんたちが暮らす住宅の改修。
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5人のお手伝いさんという、毎日を同じ時間、同じ屋根の下で生活している、他人でもなく家族でもないゆるやかな関係から、たとえ相手が見えなくても相手を想像させるような、小さなきっかけをつくれないかと考えた。
敷地
敷地は都心部の住宅地にあり、スリバチと呼ばれる台地と谷間が絡み合った複雑な凸凹地形の中腹にある。坂の上は静寂な住宅街、谷間に下ると賑やかな商店街があり、静と動、明と暗、対照的な別世界が隣り合った、まさに境界上に建っているといえる。
お手伝いさんという関係性が、スリバチ地形がつくるパラレルな世界観と重なった。
襖
個室を仕切る襖に、表から裏に続く小さなうねりを表現した。4枚の襖を横断する2本の線は、裏の世界に入る手前で1本に交わる。裏側では1本の線がまた襖を横断し、表の手前で2本に分かれる。裏の秩序が少しだけ表に現れ、裏の世界を思い起こさせる。もしくは、裏の手前で波がひとつ増え、表と裏で位相が反転するなど、視覚的には見えなくても隣り合っている、秩序が反転した世界を並列させた。
閉めた状態で向こう側を想像させる、日常では意識されないほどのちいさなつながり。スリバチの世界と同質化することで、都市生活と住生活を連続させた。
外壁
周辺には貝塚などが見つかり、縄文時代から人が住んだ痕跡が残る、歴史的にも深みのある地域であった。弁柄色はラスコーやアルタミラの洞窟壁画にもみられ、旧石器時代から使われている人類最古の顔料である。この古代色をまとうことで、土地が持つ歴史の深さに見合う佇まいとした。
真新しい摩天楼のガラスとの対比が色濃く表れている。
文脈
計画するにあたり、住環境を整えながらも「周辺環境を尊重すること」「既存住宅の趣きを引継ぐこと」が求められた。
周囲では、周辺環境や時間軸の文脈から切り離された開発が続いている。
住宅を取り巻く地域的、歴史的文脈を受け取り、未来へ引き継ぐ改修をこころがけた。
【文:note architects】
種別 |
リノベーション |
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構造規模 |
木造2階建 |
設計 | |
施工 |
ルーヴィス |
施工管理 |
高橋幸ー |
撮影 |
中村晃 |
所在地 |
東京都港区 |
和紙 |