2024/01/15 【新形】新築提案のウェブサイトを公開しました。

シゴト

WORKS
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Material Waltz

“性格”は装飾の基準であり、周囲の情況は対象物の”性格”によって決定される。

ANTONIO GAUDI 日記装飾論より

“Material Waltz”は、建築リノベーションにおける装飾の舞踏を表現した計画である。

Waltz とは3拍⼦の優美な舞曲である。楽譜には5 本の直線が等間隔に並び、その線上に⾳符が記号として描画されていくことで⾳楽となる。作曲された⾳楽は3つの拍⼦で構成されており、⼈間が踊ることで空間へ発展する。

このようなWaltz の創造過程は、リノベーションという現代の設計⼿法に対して、新しい視座を与えるものであると感じた。

楽譜に等間隔に並んだ5 本の直線は、⾳楽に対して既に与えられた規律であり、解体された既存躯体を⽬の前にした時、同じ規律性を感じた。すなわち楽譜は既存建築のルール、譜⾯の直線は空間の性質を決定する軸線と似ている。直角に規格化された既存マンション躯体に対し、所作との応答により得られた22°の斜めの空間軸を与え、新たな譜面として個性を設計した。

22°の斜めの線を建築の軸として尊重し、空間を規律することで、建物内外の要素が⾳楽のように統⼀されつつ、単調な空間を打破して独特な雰囲気を⽣み出すと考えた。このコンセプトによって、建物内の間取りや配置が⾳楽的なリズムやハーモニーを持つように統合できると考えた。建物の機能性と美しさだけでなく、来館者の感情や体験に訴えかけるものとなることを願った。⾳楽は感情を表現する媒体として広く認知されており、来館者は建物内での⽣活や滞在を通じて、その感性が都市の表層から深層に移行することを願った。

⾳符は⾵景や⼈間を含めた素材の総体であり、これらを総じてMaterial と呼ぶことにした。 その造形には、現代の機能性のみでは説明できないデザインを与えることで、Waltz で舞踊する⼈間のように“性格” を与えた。“性格” を持った新旧の素材は個性を持ち、ワンルームというひとつの空間に対してそれぞれが主張を始めると考えた。それらが朝・昼・夜という嫌でも発生する世界の3拍⼦に対して、まるでWaltz を踊るように明るく交錯することを⽬指した。

【文:赤池一仁】

CREDIT

種別

リノベーション

構造規模

RC造地上5階建

設計

ARED ARCHITECTS + 冨永識

設計担当

赤池一仁 + 冨永識

施工

ルーヴィス

施工管理

牧戸 啓

計画面積

84.16m2

撮影

中村晃

所在地

東京都

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