日ノ出町から野毛山へと向かう坂の途中に建つ、築35年の戸建住宅をルーヴィスのオフィスへと改修した。建て替えまでの期間における活用方法が模索されていた本建物を、住宅の持つスケールと居住性を活かしながらこれからの働く場のあり方を考える場所として再構成した。
設計では、仕事と休息、個人と集団、それぞれの関係を空間によって調整することを考えた。1階を応接や団欒の場、2階をワークスペースとし、上下階で機能を分けながらも階段室を介して互いの気配が感じられる構成とした。さらに1階では、日本家屋に見られる田の字型の平面形式を取り入れ、応接室、和室、リビング、キッチンを連続的に配置した。玄関側にお客様に来ていただく応接室を配置し、奥に進むにつれ団欒の空間になって行くように配置した。各室の境界には壁ではなく障子を用いることで、空間を緩やかに分けながら、視線や気配のつながりを保っている。障子を開放すれば分かれていた部屋はひとつながりの空間となり、日常の業務や休息から、講演会など人が集まる場面まで、使い方に応じて空間の広がりを変えることができる。
また、団欒の場には小上がりによる床座空間を設け、家具によって人の位置や距離を規定するのではなく、それぞれが自由に居場所を選べる構成とした。空間の中心には社員全員が入れる大きさのこたつを据え、個々の居場所を許容しながら人が自然と集まる場をつくり出している。一方、2階では既存の3つの居室をひとつの大きな空間へと再編し天井を上げることで、開放的なワークスペースを実現した。坂の途中という立地がもたらす眺望を取り込み、フリーアドレスの大型デスクを配置することで、住宅の落ち着きとオフィスの開放性を併せ持つ空間としている。
空間を明確に分けることと、互いの気配をつなぐこと。居場所を与えることと、その使い方を限定しないこと。本計画では、こうした相反する要素を、階層構成や間仕切り、床面の操作によって調整することを試みた。
働く場所が自宅やカフェ、コワーキングスペースなどへと広がり、必ずしも決まった場所に集まる必要がなくなった現代において、オフィスは単に仕事をするための場所ではなく、そこへ向かう理由を持つ場所であることが求められる。本計画では、住宅が本来持つ居心地のよさや、人が集い、それぞれの距離感で過ごせる空間構成を活かすことで、仕事をするためだけではなく、自然と足が向き、人と会い、時間を共有したくなるオフィスを目指した。