南向き斜面地に建つヴィンテージマンション一室のリノベーション。
家族3人が暮らす住まいは、かつては富士山を望むことができたほど視界がひらけていたが、現在は目の前に建物があるものの、南向きの大きな開口からは豊かな光が差し込み、冬でも日中は暖かさを感じられる。そういった恵まれた環境を最大限室内に取り込み、日々の暮らしの中で光と風景を享受できる住まいにしたいと考えた。そこで、キッチンを除く水廻りと寝室を除く、生活の中心をひとつの大きなワンルームとして計画した。
そこに物理的な仕切りは設けず、既存躯体の梁や床の構成、人の歩行によって生まれる余白を手がかりに、緩やかに領域が分かれていく「大らかな田の字プラン」とした。正方形のプランでありながら、家族の行動や家具よって4つの居場所が自然と生まれる構成である。
光をコントロールする装置として白い遮熱カーテンを採用した。直射を柔らかく遮りながら、光そのものは拡散させ、室内へ柔らかく取り込む。時間とともに変化する自然光が、白を基調とした空間に穏やかな陰影をつくり出す。床や壁の素材には、ひとや環境にやさしいものを選定し、既存躯体をそのまま見せるのではなく、その痕跡を半透明な白で漂白することで、モノとしての存在感を浮き彫りにし、空間に馴染みつつも、空間を彩る「装飾」として捉えた。光や風景、素材、既存躯体、そして家族の営みがひとつの空間の中で緩やかに重なり合い、暮らしの変化そのものが空間の表情となっていくような住まいを目指した。